京西清談は、私が東京の世田谷に住んでいるからと、気持ちが癒される、あるいは、”ほっ”とする話題を提供したいからです。
 
「人類存亡の脅威」に瀕している今こそ我々が必要とするものとは(後半)

「人類存亡の脅威」に瀕している今こそ我々が必要とするものとは(後半)

本稿の前半(前回投稿)の最終節を引用いたします。「人類存亡の脅威」になるような活動をする可能性のある政治家、科学者、そして一般市民の行動を政府なり国際機関が規制する議論が盛んに行われています。私見ですが、もっと大事なことがあると思います。各個人が「人類存亡の脅威」になるような活動をしないという倫理観の醸成が必要なことと思います。

議論を進める上で「倫理」と「モラル」は同じと考えます。そして「倫理」とは「人として守り行うべき道」を意味します。「人として守り行うべき道」では抽象的すぎるのでモーゼの十戒を例にして説明したいです。モーゼの十戒は旧約聖書の出エジプト記20章に書かれています。モーゼの十戒はふたつのパートに分かれます。(1)「神と人との関係における戒律」と(2)「人と人との関係における戒律」です。

(2)の「人と人との関係における戒律」が「人として守り行うべき道」の具体例となります。つまり、倫理の具体例です。それは以下の通りです。

  • あなたの父と母を敬え。あなたの神が与えようとしておられる地で、あなたの齢が長くなるためである。
  • 殺してはならない。
  • 姦淫してはならない。
  • 盗んではならない。
  • あなたの隣人に対し、偽りの証言をしてはならない。
  • あなたの隣人の家を欲しがってはならない。すなわち隣人の妻、あるいは、その男奴隷、女奴隷、牛、ろば、すべてあなたの隣人のものを、欲しがってはならない。

モーゼの十戒での倫理を,科学技術の行動に結びつけて再構成するとつぎのように分類されます。

①普通の人に共通の倫理:上記「人として守り行うべき道」を意味しています。それは必ずしも実行される訳ではない

②活性化された倫理(モラル)の意識:気づいて自覚することで,倫理(モラル)の意識が目覚め,活性化された状態になる.大事なのは活性化された倫理(モラル)である。

③完全性の指向:アリストテレス,アダム・スミスなど指導層のエリートは,普通の人の倫理(モラル)に満足せず,人格の完成を目指して徳を追求した。

専門家、経営者、政治家は、最低限、②活性化された倫理(モラル)を保持していなければならいと考えます。

福島原子力事故に於ける倫理問題 最近、「科学技術情報発信・流通総合システム」(J-STAGE)があることを知りました。J-STAGEは日本から発表される科学技術情報をPCやタブレットから閲覧することを可能とするサイトです。私は倫理観の醸成に関心を持ったので、関連する情報を探しました。

J-STAGEから安全工学会の会誌「安全工学」に「科学技術と倫理の今日的課題」(杉本泰治氏、福田隆文氏、佐藤国仁氏、森山哲氏による共同執筆)という5回連載記事がありました。今回のブログ記事はその連載で取り上げられていた福島原子力事故の原因究明がなにかしらのヒントになると考え、取り上げさせてもらいます。

政府事故調報告は次のように述べています。「電力事業者も国も我が国の原子力発電では炉心溶解のような深刻な事故は起こりえないという安全神話に囚われていたがゆえに、危機を身近で起こりうる現実のものと捉えられなくなっていたことに根源的問題があると思われる」

また、次のような記述もありました。「本来危険なものであるにもかかわらず、社会の不安感を払拭するために危険がないものとして原子力利用の推進が図られてきた」

政府事故調報告は言外に「負の影響を直視すべきであった!」と言っています。

私見ですが、負の影響を防ぐのは「活性化された倫理(モラル)の意識」であって、単なる倫理の知識や形式的な倫理教育では意味をなさないと思います。

残念ながら、政府事故調は倫理に無関心で、報告書の中に倫理の語は見当たらなかったです。

参考にした記事「科学技術と倫理の今日的課題」のまとめを引用いたします。

【将来に向けてのメッセージ

1 規制行政のあり方

福島原子力事故の要因に,規制行政のあり方のルー ルの不明があり,法学の空白がある。この見方が理解され,規制行政の重要性にかんがみ,合理的な解決に ついて国民一般を含めた討論がなされるとよい。そして,この関係の学問が,国民の理解と支援によって前進するとよいと思う。

2 経営者と技術者の役割

たとえば東京電力の経営者と技術者とが,「活性化されたモラルの意識」の必要性を認識してモラルの意識を共有し,共同でコミットメントを表明することがあってよいのではないか。技術者・経営者は皆,モラルを内在させている。それを活性化して業務遂行上の倫理として発揮することが大切である.両者間のその旨の対話を,国民に公開することもありえよう.電力企業の公益企業としての役割を再認識し,国民の信頼を高める対策として考慮されるとよいと思う。

3 技術者教育との関係

福島原子力事故が教えることの一つとして,科学技術は原子力を含めて本来,危険なものであり,安全にガードする役割を社会は必要とする。

1999年,「技術が社会に及ぼす影響の大きさは,正の効果も負の効果も拡大する傾向にある」との認識から,学校で倫理教育が始まった。幅を広げて,実務に従事する技術者を標準にするべきではないか。

技術者の職務は通常,経営者とともにある.専門職である技術者の倫理感と,組織におけるビジネス倫理との齟齬をなくする必要があると筆者らは考える】

本稿のまとめとして強調したい点は、専門家、経営者、政治家は、最低限、②活性化された倫理(モラル)を保持していなければならいと考えます。更に生成AIの利用が進むと普通の人も②活性化された倫理(モラル)を保持する必要があるでしょう。各個人が「人類存亡の脅威」になるような活動をしないという倫理観の醸成が喫緊の課題であると思います。

 

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