京西清談は、私が東京の世田谷に住んでいるからと、気持ちが癒される、あるいは、”ほっ”とする話題を提供したいからです。
 
504兆円の債務超過って想像できますか⁉(その4)

504兆円の債務超過って想像できますか⁉(その4)

ブログ記事「504兆円の債務超過って想像できますか⁉(その3)」の結語で、「読者のみなさまの忌憚のないご意見をお聴きしたいです」と書きました。それに対して、論客である友人、高橋信敏氏からコメントがありました。高橋氏は、私が債務超過504兆円の改善の解決策として提起した”増税と歳出削減”に対して非常に興味深い分析をしておりますので、高橋氏の了解の下、彼のコメントを2回に分けてお伝えします。
日本国の健康診断(今回)
日本国への処方箋(次回)

日本国の健康診断

大雑把に言って、1994年から2018年の24年間で、日本国全体では正味資産(国富)は▲121兆円減少しています。一般政府部門は▲442兆円減少した一方で、企業部門及び家計部門等が合計321兆円増加しています。504兆円の債務超過は一般政府部門の財政状態を示しています。次に、一般政府部門の財政赤字の原因について、具体的に挙げてみます。

①ムダな公共投資  バブル期以前の優秀な旧大蔵省官僚は、財政規律を遵守するように努力していたと想像しますが、その後弛んでしまったのではないでしょうか。特に米国から要請された630兆円の公共投資は、本来個別案件ごとに先に述べた財政規律に基づいて精査しなければいけないのに、総額の630兆円をつくることを仕事にしてしまったのではないでしょうか。その後の不況への度重なる景気対策としての公共投資も同様ではないでしょうか。また、消費税率を8%に引上げる時に日本政府は、200兆円の「国土強靭化」投資を行うと言いました。これも、消費税率アップで悪化する景気の回復対策ですが、財政規律が緩んだ証拠(消費税アップの25年分)でもあり、中身が急ぐべき国土強靭化に限定されないものです。これらには、将来回収されない投資が多分に含まれており、財政赤字を累積してゆくことになります。米国要請の630兆円が無かっただけでも、504兆円の債務超過は無かったのかもしれません。

②誤った経済政策  日本政府が採り入れた新自由主義の政策は、資本主義の欠陥を是正してきた歴史に逆行するものです。資本主義は「利潤を最大にしようとすれば、労働者の賃金を最低限に抑制しようとする。しかし、そのことによって、需要を制限することになる」という根本矛盾を抱えています。極端な利潤追求が「需要の制限」によって「成長しない経済をつくる」ことになります。日本政府は、財界の要請に従い、日本国民の購買力を削減する施策(このように意識してないのでしょうが)を採ってきました。これが、経済成長を止め、税収も増えない状況をつくりだしました。具体的には次のとおりです。

㋐米国支援の低金利政策
㋑法人税・所得税減税と代替財源としての消費税導入
㋒労働者の賃金削減

上記㋐、㋑、㋒のそれぞれについて補足します。

㋐米国支援の低金利政策   米国がいわゆる双子の赤字(貿易赤字と財政赤字)を垂れ流す中で、米国に資金を供給するために日本は、低金利政策を採りました。資金は金利の低いところから高いところへ流れるからです。日本でバブルが膨れ上がったのも、本来金利を上げなければいけない時にズルズル低い金利のままにしたことによります。今でも日本国は米国の金利を必ず下回るよう(マイナス金利も)強いられています。そして、日本国の低金利政策は、国民生活に大きな被害を与えてきました。例えば、30~40年前に退職者が退職金を郵便局に預けておけば、10年もすれば約2倍の金額になっていました。年金もそのような利回りを想定して決められていました。それが今では、利子はほとんど付きません。年金生活者らの収入低下によって購買力を喪わせたのです。この米国支援の低金利政策は、国民から数百兆円もの資金を奪ったと言われます。

㋑法人税・所得税減税と代替財源としての消費税導入   米国企業の日本国への進出のため法人税の減税を米国政府から要請されて、日本政府は消費税の導入を決断します。また法人税の減税は所得税の減税とあわせて日本財界の要請でもありました。これらの代替財源として消費税が1989年に導入されました。当然のことながら、国民の購買力を低下させ、結果として消費需要を冷え込ませ、景気を悪化させました。特に年金生活者らが預貯金の利息収入が減る中で消費税を課されたこと、中小零細企業が転嫁できない消費税を自ら負担せざるを得ないためその活力を殺がれたこと、次に述べる労働者の賃金低下も加わり、消費税率が上がるたびに経済への悪影響がいっそう拡大してきたのです。
一方で、大企業は、低金利下で借入金利息の負担を軽減されただけでなく、「国際競争力の強化」の掛け声とともに法人税を43%程度から23%程度まで引下げられた他、連結納税制度や様々な優遇税制によって、内部蓄積を進めてきました。所得税もまた、最高税率が70%から45%まで引下げられた結果、家計部門では高額所得者の蓄積が進んだのです。
消費税は1989年の導入以来2019年度までの31年間で約400兆円に上ります。一方、法人税の減税は約300兆円、所得税・個人住民税の減税は、ピーク時の1991年比で約275兆円となっています。ここでは、法人税・所得税の減税の方が代替財源である消費税収入よりも175兆円も多かったことが確認されます。これも504兆円の債務超過の重要な原因です。また、企業負担の社会保険料も軽減され(さらに派遣労働者の社会保険料負担はなく)、これが日本国の社会保障費の増加に跳ね返っていることも重要な点です。

㋒労働者の賃金削減   国内需要が冷え込む中、大企業は活路を海外進出に求めました。さらに「小さな政府」「官から民へ」等の掛け声で公務員の削減が進められ、日本国内での雇用環境は悪化しました。そうした中で、賃金削減を進める次のような施策が採られました。
①人材派遣業の解禁・拡大(=中間搾取)、
②業績評価システムの導入(賃金総額抑制)、
③外国実習生の受入れ(低賃金活用)、
④女性活躍社会と称する女性雇用拡大(低賃金活用)など。

この間、大多数の日本国民の購買力はどんどん低下することになりました。しかし、日本経団連はアジア並みの賃金水準を目指すとさえ言います。

以上に見たのは、ムダな公共投資と誤った経済政策により日本国の債務超過がつくられてきたこと、同時に成長できない経済システムをつくり、結果として税収も上がらないという状況です(続く)。

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