前号(その1)で、想像を超える債務を抱えた日本国を破綻させないために採るべき施策は増税と歳出削減としたためました。この議論に入る前に今話題を集めているMMT(現代貨幣理論)に触れてみたいです。
「財政赤字による国の破綻はない」というMMT(Modern Monetary)が盛んに本邦で取り上げられています。MMTは2018年に史上最年少(当時28歳)で米連邦下院議員となった民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員(通称AOC)が、「財政赤字を心配する必要はない」と訴えたことで論争が巻き起こりました。その議論の理論的根拠にMMTがあります。残念ながら、私はMMTの理論展開を完全に追うことができませんでした。504兆円の債務超過って想像できますか⁉
そこで巷間言われているMMTの理論的帰結を申し上げます。それは「金利上昇、そしてインフレにならない限り、財政赤字には問題がない」「インフレになったら、税金を増やせばいい」です。
日本の国債の残高はGDPの2倍を超えており、世界的に見ても相当高い水準にあります。物価が上昇し始めたら金利を上げればいいという主張は、日本銀行からすれば一番恐ろしい考え方です。国債発行残高が積み上がっているため、利上げをすれば、途端に国債の支払利子が大幅に増加するからです。
国債を野放図に発行して財政赤字になっても良いという考えは、クラウディングアウトを引き起こします。クラウディングアウトとは、財政政策の拡大が民間需要を抑制する効果のことです。財源として新規国債を発行し、民間にそれを引き受けさせることよって資金が市場から吸い上げられ、市中金利が上昇する現象が生じます。幸運にも未だクラウディングアウトの状況なっていないです。
今回のコロナ禍のような突発的な危機に対しては、国債で資金を調達する手法は止むを得ないと思いますが、社会保障費のように年々増加する費用に対してはきちんと増税で対応するなどの手立てをする必要があると思います。社会保障費の負担は複数世代に渡ります。経済学の主流派は、複数世代を考えた場合、国債発行時点の国民が過大に消費すれば、将来世代が利用できる資産が減ってしまい将来の世代が膨らんだ国債の負担を負うと考えています。私はその考えに同意します(続く)。
参考文献:
富士通総研 エグゼクティブ・フェロー 早川英男氏
「MMT(現代貨幣理論):その読解と批判」
ピンバック: 孫の世代に日本の財政は破綻するかも⁉ | 京西清談(きょうさいせいだん)