新型コロナウイルス感染拡大に伴う一律10万円の現金給付に関心が集まるなか、はからずもマイナンバーへの注目が高まっています。

マイナンバー導入(2016年1月より施行)の際言われたことは、「便利な暮らし、より良い社会を目指すにあたってマイナンバーが必要となる」でした。しかし、施行から4年経った今、我々の肌感覚としてマイナンバーの必要性が強く感じられません。"何故・・でしょうか?"
この点について、私が米国に7年間住んだ経験を踏まえて議論したいです。

米国の社会保障番号(Social Security number、略してSSN)はdefacto National Identification Number(事実上の国民ID)です。SSNは誰でも取得できる訳ではありません。原則、アメリカ市民あるいは、就労許可を持つ移民のみ申請することで取得できます(マイナンバーは住民票に記載されている住民に市区町村が付与します)。

SSNが無いと銀行口座が開設できません(日本はマイナンバーの提示がなくても銀行口座の開設は可能です)。SSNが無いと銀行口座が開設できないが日米の大きな彼我の差を生み出していると考えます。私見ですが、マイナンバーの最大の欠陥は、「マイナンバーの番号呈示が無いと銀行口座が開設できない」の条項がないことです。

さらにSSNが求められるのは、政府機関だけではありません。利用場面としては、次のようなものがあります。

  • 証券取引口座の開設にSSNの告知が必要
  • 納税申告や納税証明書、税務関連書類の提出時には、SSNを記載
  • 扶養家族または配偶者控除を申告する場合は、所得税申告書に、控除家族や配偶者のSSNを記載
  • 就職、クレジットカード取得などでも、SSNが必要
  • 運転免許証や車両登録の取得の際にもSSNが必要
  • アパート賃貸契約時・不動産購入契約時には、SSNが求められる
  • 医療保険加入時、治療の時などでも、SSNが求められる
  • 学校入学時にも、SSNが求められる

米国では"SSNがないとまともな市民生活がすることが出来ない"、"SSNの無い人は不法移民と推定される"です。ですから、マイナンバーのキャッフレーズ「便利な暮らし、よりよい社会を目指すにあたってマイナンバーが必要となる」は米国では使えないです。米国では「普通の市民生活をするにはSSN取得が必至である」になります。

米国での新型コロナウイルス感染拡大に伴う給付金の支払いは迅速に行われていますが、緊急事態宣言解除がなされても本邦での新型コロナウイルス感染拡大に伴う給付金の支払いは遅々として進んでいません。私の住む地区では6月上旬から順次支払われるそうです。
銀行口座とのひも付きのあるSSNとそうでないマイナンバーの違いがこんなところで現れています。

マイナンバー制度の下で守らなければならない私益とはなんでしょう?
下衆の勘繰りをすれば、所得を誤魔化している人、生活保護不正受給している人にとってマイナンバー制度は不都合なものです。しかし、そのような人々のための私益の議論は俎上に乗せるべきではないです。

守るべき私益とは、個人情報の保護です。そのためには

  • 個人情報は限定された政府機関でしかアクセスできないようにする
  • 目的外利用は刑事罰の対象となる。懲役を伴うような厳罰に処するぐらいで良いと考えます。

大事にすべき公益とは、助けを求めている人々をタイムリーに助けられること、そして、不正がまかり通らないようにすることと考えます。

私益と公益について考える

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マイナンバー導入の際、日本共産党は「プライバシーが侵害され、そこに国家権力が介入してくる」という論理で反対を唱えていました。この論理の飛躍は「そこに国家権力が介入してくる」の部分です。中国の現状を見てもわかるように、共産主義社会こそ国家権力によって国民が強くコントロールされる社会です。共産主義社会を目標とする日本共産党のマイナンバー導入の際の「そこに国家権力が介入してくる」という反対の論理は自己矛盾を起こしています。

しかし、「プライバシーが侵害される」の部分は配慮しなければいけない論点です。

今回の新型コロナウイルス禍を契機に私益と公益の問題を多くの人々が考えるようになりました。

新型コロナウイルス禍の下、禁3密をすることが効果的であることが多くの国で明らかになりました。人々の行動履歴がわかれば、3密状態から生まれるクラスター被害を最小にすることが可能となります。世界の40カ国・地域が接触追跡アプリを導入したそうです。日本は検討中であると理解しています。感染拡大の回避というメリット(公益)の一方で、行動履歴などの個人情報は(私益)守られるのかという不安もあります。

この点に関して日経記事「データの世紀 危機が問う選択(上)」(2020年5月25日)に興味深いコメントがありましたので引用します。【4月、オーストラリア。シドニーの会社役員、タイラー・ベックさん(55)は政府が開発した追跡アプリをスマホにダウンロードした。「監視のようで気持ち悪いが、今は非常時。妥協も必要」と自分に言い聞かせる。名前や電話番号を登録すると、他のスマホとの接近データが政府のサーバーに保管される。感染者の近くにいたことが分かれば、本人に通知される仕組みだ。スマホにしかデータを残さない仕様に比べ、個人情報の政府利用への懸念はどこまでも残る。だからこそ政府は丁寧な説明に徹した。 導入前からモリソン首相自ら「皆さんがこのアプリを使えば、社会規制を緩和できます」と国民に呼びかけた。同時にプライバシー法を改正。集めた追跡データには保健当局のアクセスしか認めず、目的外利用は刑事罰の対象とした。厳格な移動制限などと相まって国民の理解は進み、アプリも現在まで500万人以上が使う好循環が続く。】

上記記事のポイントは次の内容と考えます。

  • 接触情報から感染リスクの可能性が通知される
  • 接触情報は限定された政府機関でしかアクセスできない
  • 目的外利用は刑事罰の対象となる。オーストラリアの量刑は不明ですが、懲役を伴うような厳罰に処するぐらいで良いと考えます。

世界のコロナ対策を見渡し、民主主義国家が目指すべき方向を慶応大の山本龍彦教授は、次のようにコメントしています。「私益か公益かの二択ではなく、両立できる均衡を追う。それが強権国家との違いだ」

私見ですが、私益と公益が両立できる均衡を測ることは可能と考えます。

巣篭もり生活でのひとつの読書法

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巣篭もり生活をしているとあり余る時間を持て余す時があります。そのような状況の時の読書法を紹介します。

この読書法のポイント

  • 時間があるので、連載記事を一気読みする
  • 時間があるので、興味を引いた記事の内容をネットで調べる
  • 時間があるので、ネットで調べた内容を更に執拗く調べる

連載記事を一気読みする 私はiPadで電子版の新聞を読んでいます。
電子版を購読して便利な点は、連載記事をまとめて一気に読むことができることです。

最近読んだ記事は日経の「経済でみる名画」の10話連載です。その連載は(1)レオナルド・ダ・ヴィンチ「受胎告知」から始まり、(2)ピーテル・ブリューゲル(父)「ベツレヘムの人口調査」、(3)レンブラント「織物商組合の見本検査人たち」、(4)ブーシェ「ポンパドール夫人」・・・・(10)エドワード・ホッパー「ナイトホークス」まで続きます。

興味を引いた内容をネットで調べる 第4話のブーシェ「ポンパドール夫人」を例にしてご紹介します。【ブーシェの描く甘美で優雅なロココ絵画は貴族に愛され、王の愛妾ポンパドール夫人もブーシェに多くの肖像画を描かせている。18世紀には貴族や有名人の肖像画が多数描かれ、その模倣作も広がっていたようだ。彼女の髪形はフランス女性の間に流行した。ポンパドール夫人は「人々の自宅に肖像が飾られた」元祖アイドルといえるかもしれない(日経記事)】
解説が画家ブーシェの作品を知る手助けをしてくれました。
ポンパドール夫人.jpg

絵の題となっている「ポンパドール夫人」が知りたくなり、iPadから「ポンパドール夫人」を検索しました。"ありました!"
【彼女は結婚していたが、ルイ15世に見初められ夫と別れ国王の愛妾となった。そして、ポンパドール侯爵夫人の称号が与えられた。
フランス国王の公式の愛妾となったポンパドール夫人は、湯水のように金を使って、あちこちに邸宅を建てさせ(現大統領官邸エリゼ宮は彼女の邸宅のひとつ)、やがて政治に関心の薄いルイ15世に代わって権勢を振るうようになる。(ウィキペディア)】
画家、ブーシェに彼女の肖像画を多く描かせる力がポンパドール夫人にあったのですね。発見でした。

ネットで調べた内容を更に執拗く調べる ポンパドール夫人のパトロンであるルイ15世について知りたくなったので、iPadで調べました。
【ルイ15世は、曾祖父ルイ14世の死によりわずか5歳で王に即位した。それ故、政務は摂政が取り仕切っていた。15歳の時、王妃マリー・レクザンスカと結婚、王妃はほぼ毎年のように妊娠出産し11人もの子を生むことになる。結婚から数年間は仲睦まじかったが、王妃はほぼ毎年妊娠させられる夫婦生活を厭うようになった。それを契機にルイ15世は数多くの愛妾を持つようになる。その中で、ルイ15世が最も信頼した愛妾がポンパドール夫人であった。(ウィキペディア)】
ルイ15世の置かれた境遇から彼は政治には関心がないようで、無為に過ごす時間から生じるあり余る体力のはけぐちが必要となったようです。そして、多くの女性との性交渉がはけぐちになったと思われます。カネと地位があって、そして、やることが無いと、"男って!どうしようもない生き物ですね" 更に資料を読むと、ルイ15世の後のルイ16世の時、フランス革命が起こり、ルイ16世と王妃マリー・アントワネットは断頭台の露と消えたのでした。

巣篭もり生活の読書法の勧め ブーシェの描くロココ絵画の解説から意外な展開となりフランス革命まで想定外の体験がこの読書法で出来ました。巣篭もり生活の読書法を一度試してみては如何ですか⁉

緊急事態宣言が解除されても、みなさまの命を守るため家族の命を守るため、新しい生活様式(要手洗い、要マスク、禁3密)は大事です。つまり、新しい生活様式は巣篭もり的生活をこれからも求めていると考えます。

今回の検察庁法の改正案を考える

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ご無沙汰しております。
本ブログの更新を4年近く休止しておりました。
この度、再開することにいたしました。
不定期ですが、よろしくお願いします。
村田守弘

今回の検察庁法の改正のポイントは次の通りです。

  1. 検察官の定年を63歳から65歳に延長すること。
  2. 検察官の役職定年を導入し、63歳を役職定年にしたこと
  3. 役職定年の例外措置!最大2年間延長65歳まで役職に留まれる
  4. 改正法案の施行日は2022年4月1日である

今回の定年延長の改正は、人生100年時代を考えると妥当な方向と考えます。しかし、上記3は内閣による人事権行使が可能になると推測されます。内閣が人事権を握れば、検察官は政治に配慮、忖度するようになります。検察の独立性の観点から3は大いに疑念が残ります。

今回の改正の過程で明らかになった次の問題点は、国家公務員法81条の3に定める国家公務員の勤務延長制度についてです。当初、国家公務員法81条の3に定める国家公務員の勤務延長制度は検察官には適用されないとの解釈答弁がなされていたにもかかわらず、唐突に森法務大臣は同条文の解釈変更をしました。私見ですが、本邦は安易に条文の解釈変更をします。この点は非常に由々しき問題と考えます。

森法務大臣の解釈変更によって、黒川検事長の定年延長を閣議決定しました。それによって黒川検事長を検事総長にする道が開けました。黒川検事長を知らないので、彼の資質云々を言うことはできないですが、安倍内閣主導による人事が、検事総長の独立性を脅かす懸念を大いに感じています。

検察庁法第14条を引用します。「法務大臣は、第四条及び第六条に規定する検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる」つまり、検事総長は総理大臣をも逮捕できるのですから、総理大臣とは距離を置くことが出来る人物である必要があります。

日本国憲法は、国会(立法)、内閣(行政)、裁判所(司法)の三つの独立した機関が相互に抑制し合い、バランスを保つことにより、権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する「三権分立」の原則を定めています。今回の法改正の問題点を三権分立の観点から議論することには注意を要します。

検察庁は行政府に属するものであり、検察権は行政権の一つです。したがって、検察権と内閣の関係を、三権分立という観点から見ると間違った議論になりがちです。むしろ、行政府の中でも検察庁というのは特殊な組織であり、すでに述べたとおり、政治的な独立性を保たなければならない官庁です。したがって、その独立性が脅かされないかどうかが重要です。国家公務員法とは別に検察庁法が規定され、特別な規定が置かれているのはその独立性を担保するためと考えます。

ベトナム公務員に2500万円提供

日本経済新聞 2020年5月11日

このニュースをみて、多くの企業は対岸の火事だから関係ないと感じると思います。

しかし、このニュースはガバナンスの観点、企業リスクの観点から多いに問題にすべきと考えます。

グローバル企業にとって大きなリスクのひとつは、海外腐敗行為、すなわち海外で公務員への贈収賄です。この罰金や制裁金などのペナルティが桁違いに大きいからです。更に留意すべき点は、経済協力開発機構(OECD)の外国公務員贈賄防止条約が発効していることから、日本企業の行った不正行為に対して、ある日突然、米国や英国の法律の域外適用を受けるという事態が起こりえます。「悪いことをしている企業を取り締まれないあなたの国の検察に代わって法を執行しているのだから逆に感謝してほしい」という理屈が通ってしまい、日本企業は反論できない立場に置かれてしまいます。

今回、贈賄を行った会社が地裁に自主申告したのは、多分、桁違いに大きくなる可能性のある罰金や制裁金などを少なくしようとした意図があったと推測されます。

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