京西清談は、私が東京の世田谷に住んでいるからと、気持ちが癒される、あるいは、”ほっ”とする話題を提供したいからです。
 
「このままでは我が国の国家財政は子供や孫の世代に破綻する」下

「このままでは我が国の国家財政は子供や孫の世代に破綻する」下

みなさまへ

今回は「このままでは我が国の国家財政は子供や孫の世代に破綻する」下です。
この回では村田守弘の見解を述べさせてください。

村田守弘の懸念:このままでは我が国の国家財政は子供や孫の世代に破綻するのか
の記事は昨年10月前後にブログにアップロードした記事「(我が国の)504兆円の債務超過って想像できますか」を編集した内容で、使用している数値は昨年のものを使用しています。

我が国の財政事情は戦後ずっと酷かったのでしょうか?
意外と思われるでしょうが、昭和の時代、財政はほぼ均衡していました。平成の時代になり財政は不均衡になりました。

平成からの我が国の財政の変遷を見て下さい。

 

上記グラフを見て下さい。左側の軸が金額(単位:兆円)、右側の軸が政府債務残高対GDP比(単位:%)を示しています。このグラフは財務省のデータを下に私が作成したものです。
水色の折れ線グラフは、歳出を示しています。現時点では歳出は128兆円です。
茶色の折れ線グラフは、税収を示しています。現時点では税収63兆円です。
棒グラフが政府債務残高対GDP比です。2019年に政府債務残高対GDP比は238%です。

平成元年(1989年)12月29日、日経平均株価は3万8915円の史上最高値を付け、わずか9カ月後の1990年10月1日には2万円割れと半分の水準にまで下落しました。その後の数年間は不良債権処理に日本は追われます。バブル崩壊時に税収がさがるのは止むを得ないですが、残念ながら反転することなしに税収減は続きました。更に悪いことに平成20年(2008年)リーマンショックに襲われます。そこで更に税収は落ち込みます。平成の時代から今日までに消費税は3回増税されていますが、全体の税収アップにつながっていません。この事実から言えることは、アフターバブル、アフターリーマンの時に法人税、所得税の適切なアップをしなかった過ちがあったと考えます。つまり、悪夢の民主党政権、それに続く安倍長期政権が財政の面では大きな禍根を我々に残しています。

現在、コロナ禍により多くの人々の生活が脅かされています。緊急時におカネを使う事は必要ですが、緊急時が過ぎたら税収を反転させることが必要です。

■日本国の財政状態
財務省の連結財務書類をもとに日本国の貸借対照表を作成しますと2019年3月31日の資産合計は1013兆円でした。一方負債は1517兆円でした。資産合計から負債合計を差し引くと、負債が504兆円残ってしまいます。その意味は国有財産をすべて処分しても借金が504兆円残ることです。
コロナ禍により2020年には政府は第1次、2次補正予算として合計約58兆円の財政支出を決定しました。そしてその財源には国債が充当さました。10万円の特別定額給付金の原資は国債だったのです。ですから、日本国の債務超過額は更に膨らんでいます。想像を絶する債務超過に日本国はなっています。

日本国は誰から借金しているか?気が付かない方が多いと思いますが国民から借金しています。
国債とは国の借金です。国債を直接所有している人はそう多くはないですか、すべての国民は銀行預金をしています。銀行の資金の運用の大半は国債に投資されています。ですから、銀行預金をしている人は間接的に国債を所有します。

日本国が倒産したらと想像するとどうなるのでしょうか?
最悪のシナリオは令和の徳政令です。汗水ながして貯めた貯金がすべて消えて無くなる事態です。徳政令とは、日本の中世、鎌倉時代から室町時代にかけて、朝廷・幕府などが土倉などの債権者・金融業者に対して債権放棄(債務免除)を命じた法令です。

汗水ながして貯めた貯金がすべて消えて無くなるような令和の徳政令は、現実的ではありません。絵に描いた餅の類の議論です。
可能性ある施策、むしろ採るべき施策は増税歳出削減です。

MMT(現代貨幣理論)[1]を考える
「財政赤字による国の破綻はない」というMMT(Modern Monetary Theory)が盛んに本邦で取り上げられています。MMTは2018年に史上最年少(当時28歳)で米連邦下院議員となった民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員(通称AOC)が、「財政赤字を心配する必要はない」と訴えたことで論争が巻き起こりました。その議論の理論的根拠にMMTがあります。

そこで巷間言われているMMTの理論的帰結を申し上げます。それは「金利上昇、そしてインフレにならない限り、財政赤字には問題がない」それでは「インフレになったら、税金を増やせばいい」です。
日本の国債の残高はGDPの2倍を超えており、世界的に見ても相当高い水準にあります。物価が上昇し始めたら金利を上げればいいという主張は、日本銀行からすれば一番恐ろしい考え方です。国債発行残高が積み上がっているため、利上げをすれば、途端に国債の支払利子が大幅に増加するからです。

国債を野放図に発行して財政赤字になっても良いという考えは、クラウディングアウトを引き起こします。クラウディングアウトとは、財政政策の拡大が民間需要を抑制する効果のことです。財源として新規国債を発行し、民間にそれを引き受けさせることよって資金が市場から吸い上げられ、市中金利が上昇する現象が生じます。幸運にも未だクラウディングアウトの状況なっていないです。

今回のコロナ禍のような突発的な危機に対しては、国債で資金を調達する手法は止むを得ないと思いますが、社会保障費のように年々増加する費用に対してはきちんと増税で対応するなどの手立てをする必要があると思います。社会保障費の負担は複数世代に渡ります。経済学の主流派は、複数世代を考えた場合、国債発行時点の国民が過大に消費すれば、将来世代が利用できる資産が減ってしまい将来の世代が膨らんだ国債の負担を負うと考えています。私はその考えに同意します。

話題のMMTは経済理論です。経済理論で注意すべき点は、その理論の前提です。前提が崩れればその理論は成り立たなくなります。我々はその理論の結論だけを鵜呑みにして、前提を忘れる傾向があります。MMTの理論を要約すると「金利上昇、そしてインフレにならない限り、財政赤字には問題がない」です。しかし、我々は結論のみをいいとこ取りして、「財政赤字を続けても、日本は破綻しない」と考えます。大事なことはMMTの前提である「金利上昇がない」、「インフレにならない」です。この前提が崩れると財政赤字で日本は破綻するとの結論となります。

今後50年間ゼロ金利は継続するのか。
先ず、過去の推移を見てみます。50年前の短期プライムレートは6.25%、40年前には9.25%まで金利が上がったことがあります。30年前は6.25%、20年前は1.5%、10年前は1.475%です。日本が高度成長をしていた時の金利、今から考えると高金利の昭和の時代が終わりリーマンショックから平成の失われた20年間は低金利が続いています。

MMTの下での金利上昇がないという前提で考えなければいけないことは、50年先、つまり我々の孫、或いはひ孫の世代までの金利が現状のような低金利であるか否かです。これからの日本は多死社会になります。つまり人口減少社会になります。もし、一人当たりの生産性が現状と同等であるとするとGDP減少社会になります。GDP減少社会になるとクラウディングアウトとなり金利は上昇します。過去の歴史からも50年間低金利が続くという蓋然性を見出すことができません。これから50年の間、金利上昇はないというMMTの前提に疑問符をつけざるを得ません。

国債がGDPの2倍以上もある日本(多くの先進諸国は国債の残高はGDPの範囲内にあります)で金利が上がったら、財政は壊滅的打撃を受けます。長期的に見ると金利は上がらないという保証はなく、むしろ金利は上がる蓋然性が高いです。ですから「財政赤字を続けたら、日本は破綻する可能性がある」になります。

このままでは我が国の国家財政は子供や孫の世代に破綻する蓋然性が高い
「このままでは我が国の国家財政は子供や孫の世代に破綻する」(上)と(下)を併せ読むことで、50年後のわが国の国家財政の将来像が推測できるのではないかと思います。

「国家100年の計」を語れる政治家は残念ながら居ません。選挙で当選するには「国家100年の計」を語るより、「根拠なき楽観論」を語る方が効果的だからです。

しかし、首相には「国家100年の計」を熱く語って欲しいです。岸田首相に言って欲しいメッセージがあります「成長と分配、それと応分の負担も必要となります。孫やその先の世代のことを考えると財政健全化は避けて通れない道です。しかし、今はコロナ禍の下での喫緊の対応策がいくつかあります。そのためにおカネを使う事は合理的と考えます。しかし、緊急時が過ぎたら財政健全化のことも考えます」

 

[1] 参考文献:富士通総研 エグゼクティブ・フェロー 早川英男氏
「MMT(現代貨幣理論):その読解と批判」

 

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