歌舞伎座4月公演のもうひとつの演目は「連獅子」でした。連獅子は我が子を千尋の谷に突き落とした親獅子がこの試練に応え駆け登った仔獅子だけを育てるという獅子の故事をテーマにした日本舞踊の演目です。
配役は“親獅子”が尾上松緑、“仔獅子”が尾上左近という親子キャストです。
長唄、三味線、笛、小鼓、大鼓、太鼓の演奏者がひな壇に並ぶ壮観な演出に度肝を抜かれます。当に和楽器のオーケストラ演奏で、その演奏を堪能しました。私は歌舞伎で奏でられる笛の音がトランペットの音色のようでたまらなく好きです。そして、親子の息の合った踊りはもちろんのこと、左近のキビキビした踊りは素晴らしい一言に尽きます。
彼の踊りを見ていて吉田修一の小説「国宝」のストーリーが思い出されました。極道と梨園。喜久雄と俊介。生い立ちも才能も違う若き二人の役者が、芸の道に青春を捧げていく。芝居だけに生きてきた男たち。その命を賭してなお、見果てぬ夢を追い求めていく上下巻で20の章立ての歌舞伎を題材にした長編小説です。最近読んだ小説では感動ものでした。
喜久雄と俊介が芸に秀でるために稽古で流した汗は半端なものではなかったです。尾上左近も同様な汗をたくさん流しただと彼の踊りを見ながら感じました。
歌舞伎の世界に興味を持つ方に吉田修一の小説「国宝」はお薦めです。書店で手に取ってみてください。