京西清談は、私が東京の世田谷に住んでいるからと、気持ちが癒される、あるいは、”ほっ”とする話題を提供したいからです。
 
ピアニスト實川風とバッハ

ピアニスト實川風とバッハ

2023年春にリリースしたオール・バッハ・アルバム『實川風バッハ』を記念した公演が、5月19日に渋谷区文化総合センター大和田さくらホールで開催されました。バッハの曲集ひとつだけでコンサートで演奏する曲は充分あります。しかし、實川さんは数あるバッハの曲集を取りあげ、その中から選曲して魅力的なプログラムを作り上げました。選曲した曲の一部を抜粋します。

  • フランス組曲 第2番 ハ短調 BWV813
  • 平均律クラヴィーア曲集第1巻より前奏曲とフーガ 第2番 ハ短調 BWV847
  • パルティータ 第2番 ハ短調 BWV826
  • アリア「羊は安らかに草を食み」 変ロ長調 BWV208
  • コラール「主よ、人の望みの喜びよ」 ト長調 BWV147

CDで聴いたバッハと生演奏で聴いたバッハは共に實川さんの演奏ですが、やはり違いがありました。何が違うかと言えば、音量の違いにあると思います。特にピアニッシモのようなとても弱い音、フォルテッシモのようなとても強い音がCDでは聴き易く調整されていますが、生演奏ではその調整が入りません。誤魔化しが効きません。それ故、演奏者の技量とピアノの音質とホールの音響との調和が整った時の観客の感激あるいは陶酔の気持ちは計り知れないものとなります。實川さんのピアニストとしての素晴らしさは、難しい調和を難しいと感じさせない能力です。

自分の好きな演奏家の生演奏を聴くことを勧めます。至福の時間を持つことが出来るでしょう。

ところで、1オクターブを12等分にした音律のことを平均律と言います。平均律から12の長調、12の短調が作れます。バッハは合計24の調それぞれから前奏曲24曲、フーガ24曲を作曲しました。「平均律クラヴィーア曲集」1巻 第1曲ハ長調の前奏曲は、私のような初心者でも問題なく弾けますので親近感が湧きます。グノーの「アヴェ・マリア」はこの前奏曲にメロディをグノーが加筆した作品です。 19世紀のドイツの音楽家ハンス・フォン・ビューローがこのバッハの「平均律クラヴィーア曲集」をピアノの「旧約聖書」と呼びました。私はピアノの「旧約聖書」のさわりの部分を知ったことになります。そのことが嬉しいです。

 

 

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